日本とオランダで暮らしてみて

日本とオランダで暮らしてみて

こんにちは、MoST JAPANスタッフの佐藤まり子です。
私は2017年5月にオランダに移住し、4年4ヶ月の時を過ごしました。
子供の頃からオランダにいるわけではないので、関わったオランダ人たちには少し偏りがあるかもしれませんが、これまでに感じた日本とオランダの違い、そしてそこからの学びについて記します。

他人の人生に干渉しないこと

日本にいたときは、仕事や結婚に関して見えない圧力なものを感じていたような気がします。「恋人はいるの?」「結婚はどうするの?」「仕事は?」と、第三者に直接聞かれることもありますし、街に溢れる広告を見ると、美容や仕事、恋や結婚について嫌でも意識してしまいます。

日本(特に東京)には、たくさんの娯楽や素敵な商品・サービスがありますが、楽しさを感じる一方、ずっとそこにいると疲れてしまうし、本当に自分が何を欲しているのかわからなくなってしまう時もあります。

この点、オランダはのんびりしていて、他人の人生に過度に干渉してきません。このオランダ人の性質について、「自分にしか興味がないからね」とサラッという人もいますが、それがすごく楽なのです。

「やりたければやればいいし、やりたくないならやらなければいい」。友達に何かお節介を焼こうとすると「それって、彼・彼女は本当に欲しているの?」と諌められることもあります。

「オランダ人は物言いがダイレクトだ」といわれることがありますが、プライベートなことを不躾に聞かれることはほとんどありません。一方で、「おもてなし」や「気遣い」で知られる日本人の方が、土足で人のプライベートに踏み込んでくる時があると感じます。以前、日本に一時帰国した際、あまり親しくない目上の男性にいきなり「結婚は?」と聞かれて驚いたことがあるのですが、オランダでは一度もそのように聞かれたことはありません。

自分と他者の境界線がはっきりしている

仕事に関して、日本にいたときは「120%を目指すべき」「成長すべき」「勤勉であるべき」といった空気を感じながら働いていました。個人的には好きな雰囲気なのですが、皆が皆、そうありたいわけではありません。

アムステルダムに初めて引越ししてきたときに、「アムステルダムには180の人種がいる」と聞きました。だからか、オランダ人たちは「人と自分は違う」という前提で会話をしています。一方、私は単一民族の島国で育った日本人です。そんな私がオランダで過ごしていると、「人に自分の価値観を押し付けてはいけない」と頭では分かっていても、自分の価値観に沿わない人に対してイライラしてしまうことがありました。

理想を持つことはとても大事なことですが、それは個人が心の中に持っていればいいもので、誰かに押し付けるべきではないよな…と反省するようになりました。

もちろん、雇用契約書に書かれていることや、社内ルールは守らなければなりません。しかし、日本人は暗黙のルールに沿わない人に対して、感情的に怒ったり、人格否定までしてしまう傾向があると思うのです。

オランダで同様のことをすると、ものすごく白い目で見られます。オランダ人は、人の価値観を否定したり、倫理観にまで介入してくることは殆どありません。

この点に関しては、日本人は「個人」と「他者(社会)」の境界線が曖昧なのかなと感じています。社会規範に従わない人を許さないというか…。オランダで暮らしてからは、自分の価値観や「常識」とされることを押し付けないよう、より一層気をつけようと考えるようになりました。

ルールを守ろうとする姿勢

社会規範の押し付けが個人にプレッシャーを与えてしまう点は良くないですが、コロナ禍における日本とオランダ、両方の社会を見て、災害時や非常時に足並みを揃える日本人の姿勢は素晴らしいと感じました。

ロックダウンや夜間外出の施策をとってもなお、オランダは日本よりもずっと感染者が多く、一時期は罰金が課されるエリア以外でマスクをする人は殆どいませんでした。

日本に一時帰国した際、法律で制限されているわけでもないのに、街中で自主的にマスクをする人々を見て驚きました。ロックダウンをしなくても、感染を抑えられている点も凄いと感じましたし、日本人はキチンとしているな…と改めて思いました。4年も日本を離れていた私の視点なので「いやいや、実際はそんなことはないよ」と思う方もいるかもしれませんが、オランダから帰ってきて感じた、率直な感想です。

お節介が救いになることもある

「助けてほしい」と言えば、オランダ人は手を差し伸べてくれますが、日本人ほど空気を察して先回りして気遣いをしてくれる人は殆どいません。これは「自分のことは自分でやること」を大切にしている国民性も影響しているかもしれません。「私たちは大人で、子供じゃない。だから、自分のことは自分でやるんだ」という、矜持のようなものを感じます。

確かに、個人を尊重することは大切なことです。しかし、たまに無性に日本人のお節介さや優しさが恋しくなることがありました。日本に旅行に来た人たちから「日本人は優しい」と評されることがありますが、これは私たち日本人がずっと大切にした方が良い国民性だと思います。もちろん、冒頭で紹介したエピソードのように「要らぬお世話」はしないよう心がけなければなりません。

 

日本とオランダ、どちらがいいという訳ではなく、どちらもそれぞれ、いい側面・改善していくべき側面があります。お互いの良いところを少しずつ学びあえたら、きっと今よりも素敵な社会にできるはずです。

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